健康保険「協会けんぽ」が直面している厳しい現実
「協会けんぽ」は中小企業で働く方やそのご家族が対象の健康保険です。国民の約3.6人に1人が加入しており、サラリーマンの医療保険の「最後の受け皿」として国民皆保険制度を支えています。現在の保険料率は全国平均で10.0%、「健康保険組合」や「国家公務員共済組合」よりも重い負担です。当協会は医療費を抑える「ジェネリック医薬品の使用促進」などの対策を進めてきましたが限界があり、加入者の医療を支え続けるため、やむなく保険料率を引き上げてきた現実があります。

同じ医療サービスを受けるのに、他の健康保険よりも保険料負担が重い大きな格差が生まれています。加入者の負担はもはや限界。さらなる国の補助が必要です。
保険料率10.0%は、多くの中小企業にとって負担の限界です。これ以上に負担が増せば、経営破綻などを引き起こす懸念があります。加入者からも、「企業の利益率が下がる中での負担増は、雇止めにつながる」、「将来が見通せず、不安だ」など深刻な声が上がっています。平均給与が低い中小企業が中心の当協会は、構造的に財政が脆弱なため、国庫による補助が制度化されており現在の補助は保険給付費の16.4%です。しかし、さらなる増額が必要というのが現実です。

支出の4割は加入者のために使われない。制度の見直しが求められます。
健康保険は、高齢者の医療費も支え合って負担する仕組みです。当協会では、支出の4割(約3.5兆円)が高齢者医療にあてられており、協会けんぽの財政を悪化させています。もちろん高齢者医療を支えることは大切ですが、他に方法はないのか。こうした現実は「国民皆保険制度」全体の問題でもあります。さらなる社会の高齢化が進む中、制度の見直しが必要な時です。

④このままでは近い将来、深刻な累積赤字になる可能性も。
「協会けんぽ」加入者の賃金が現状のまま、国の支援が現在の水準であり続ければ、平成28年度には収支が1,900億円の赤字に。平成30年度には、赤字が5,300億円にまで拡大、積立金も使い果たし、1,700億円の累積赤字となる可能性があります。当協会では、これまで繰り返し補助の増額を国にお願いしてきましたが、残念ながらいまだ実現していません。